ビロードの口づけ 獣の森編


「ジン様ーっ、ライ様ーっ」
「ミユ! 無事か?」
「ジン様? 無事ですけど、ここから出られません」
「そこにクルミはいるのか?」
「真っ暗で見えませんが、いないと思います。奥があるみたいですけど」
「どうやって入った?」
「えーと、上から二段目? か三段目の右端にある本をうっかり押したら書棚が扉のように内側にめり込んだんです」


 バランスを崩してミユが床に倒れ込んでいる内に、書棚は元の位置に戻り閉じ込められたらしい。
 内側からは開けられないという。

 クルミも同じようにして中に入ったのかもしれない。
 意外と行動力のあるクルミは、じっと助けを待つより別の出口を探して奥へ進んだのだろう。


「少し下がってろ」


 ミユに忠告してジンは書棚を確認した。
 三段目にある本が少し奥に入っている。

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