「さすが比奈公。鋭いねぇ。まあ、生徒の皆には出張、校長には用事って伝えてあんだけどさー。本当は鈴蘭のショッピングに付き合うんだ。」


鈴蘭というのは、スイちゃんのお姉さんの事だ。


私はスイちゃんを睨む。

「仕事しなよー。スイちゃん……」


「はっは。」

いくらサボり保健教員だとしても、白衣のポケットに手を突っ込み、片手で髪の毛をかきあげる仕草は素直にカッコいいと思う。

元々、年も若く美人なこの教員は、親がなんとか組の組長――つまりヤクザで、本人自身はヤクザではないものの、皆の憧れの保健室の先生とはかけ離れた言動や行動を時々披露してくれる。


「……待って。神崎は?」


「…」


数秒の沈黙の後、スイちゃんは私と寝ている神崎の顔を交互に見て、口元にうっすらと不気味な笑みを浮かべた。


こういう事せずに黙って座っていれば、苦しい婚活から脱け出せるのに――…なんて事を思いながら私はスイちゃんを睨んだ。