【短編】佐藤君は無口
佐藤君は無口



(あ、あれ……?)



筆箱の中にいつもは入っているはずの消しゴムが入っていないことに気が付いた。

昨日、宿題をしてそのまま机の上に置いてきてしまったらしい。

そうやって私がもたもたしている間にも授業はどんどん進んでしまう。

うーん、とりあえずノートはとらないとだし……しょうがないか。



(……ん?)



もう一度シャーペンを握った瞬間、机が小さくコンコンと叩かれた。

横を向くと、隣の席の佐藤君が消しゴムをこちらに差し出している。

貸してくれるってことだよね……?



「あ……ありがと」



私がそう言って消しゴムを受け取ると、佐藤君は黙って頷き、また黒板のほうを向いてしまった。



隣の席の佐藤君は、この通り 無口 である。


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