君と、世界の果てで

(4)ライブがはねたら



深音が私物を持ち帰った部屋は、それだけでさっぱりしてしまった。


あとは、陸の物を捨てるか、実家に持ち帰れば片付け終了だ。


その後は、どうしようか。


そんな事を考える暇もないまま、あっと言う間に、ライブ当日を迎えてしまった。


着替えが面倒くさいので、衣装のスーツを着て。


新しい弦に張り替えたベースを、車に載せた。



「……あぁ?」



携帯が鳴る。


誰かと思えば、紗江からのメールだった。



『ライブ見に行くから。頑張ってね』



だと。



「……何を今更……」



もう、俺は気づいてしまっていた。


紗江に対する気持ちが、いつの間にか、冷えてしまった事に。


返事もせず、携帯をポケットに突っ込んで。


煙草をふかしながら、エンジンをかけた。


今日、考えるのは。


ライブの事だけにしよう。


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