君と、世界の果てで
家の裏に回り、道を一本横切ると、直ぐに浜辺に着く。
浜辺に降りる石段に腰かけ、ケースからギターを取り出した。
「お前も久しぶりだな」
指で直接弦をなぞると、ぽろんと、優しい音がした。
冬の海には、ほとんど人がいない。
昼間からぼんやりしてるのは、大学生の俺くらいか。
「よいせ」
気ままに、昔の曲を指で弾く。
いつものエレキベースとは違う、柔らかな音がする。
次第に、海風の冷たさも気にならなくなってきた。
頭のモヤモヤが、少しずつ、音に乗って飛んでいく。
そうやって、何曲か、気の向くまま、弾き続けていると。
ポケットの携帯電話が震えた。
「んだよ……」
調子が出てきたところなのに。
しかしそんな不満は、表示された名前に消されてしまった。
「はい」
少しだけ、胸に苦しさを感じた。
『もしもし。今、大丈夫ですか?』
「おぅ」
かけてきたのは、深音だった。
『今どちらですか?』