君と、世界の果てで
うちの母親曰く破れたTシャツ。
その上には、穴が空いたようなニット。
またその上には、黒革のライダースジャケット。
下半身は、膝と膝が長いベルトで繋がったパンツ。
髪は、重力に逆らっているし。
……やっぱり、やめておこう……
娘の彼氏が初対面でこんな格好だったら、俺なら張り飛ばす。
いや、俺等は付き合ってないから良いのだろうか……。
「あの、そんなところじゃ寒いから、どうぞお上がりになって」
「!?」
家の前で話をしていたら、突然玄関の扉が開き、深音の母親が現れた。
……母親、だよな?
彼女はめちゃくちゃ綺麗で、年を感じさせない。
「あ、あの、娘さんのバンドでベースを弾いています、堺沢と申します」
今まで一度も出なかったけど、堺沢は、俺の苗字です。
思わずペコリと頭を下げる。
「あらあら、礼儀正しい方!
さぁ、上がってください。
コーヒーで良いかしら?」
花が咲くような笑顔が、彼女からこぼれる。
ぼんやりしていると、背中を深音に押された。