君と、世界の果てで
(1)プロローグ
暑い。
長袖で来るんじゃなかった。
なんで、もう10月だというのに、こんなに暑いんだ。
まぁ、場所も場所だから、しょうがないが。
俺は、彼女を連れて、小さなライブハウスに来ていた。
薄暗く、狭い空間。
「飲み物がほしい……」
「バカ。こんな前の列とっといて、何言ってんだ。
本番でもみくちゃにされて、濡れるだけだぞ」
「だって、せっかく陸君が出るんだもん」
只今、開演5分前。
会場は異様な熱気に包まれていた。
何が始まるのかと言うと。
実は、俺の弟のバンドのライブなのだ。
もちろん、アマチュアのタイバンライブ。
もちろん、余ったチケットを無理矢理買わされた。
「絶対、損させないから」
弟が自信満々に言うので、彼女を誘って、見にきてやったわけだが。
周りは、身体中にピアスをバカバカしたり。
宝塚ばりの化粧をしたり。
全身真っ黒の布に、意味のわからない鎖が付いた服を着ていたりする。