君と、世界の果てで
(3)ラブレター
結局、俺がどんなに説得しても。
深音は、ライブをやめる事も、待受画面を設定しなおす事も了承しなかった。
薬を隠し持ってステージに上がる約束だけは、取りつけたが。
詳しい病状を聞いても、
「あたしも先生の話は難しくて、よくわからないの。
ただ、心臓の部屋の弁が、良くないっていうか……普通じゃないみたい」
としか、説明しなかった。
「翼さんといても言うこと聞いてくれないなんて、困った心臓ちゃんだこと」
なんて、冗談を言っていた。
だけど。
深音だって、不安なことには違いないだろう。
俺はあの日から、予備のペットボトルと、発作が起きた場合の薬を一回分ずつわけて持ち歩いている。
もし、何度も発作が起きるようになったら。
もし、持ち歩けないほど薬の量が増えたら。
もし、移植が、間に合わなかったら。
不安が、みしみしと音を立てて、忍び寄っている気がした。