君と、世界の果てで


甘ったるい香りに、脳がやられそうだ。



あぁ。



ダメだ。



完全に、翻弄されている。



「いいから、離れろ!!」



しっかりしろ、俺。


この子は、弟の彼女だぞ。


弟、死んだけど。


惑わされるな、惑わされるな。



「あの、翼さん」



彼女を引き剥がすと、崇文がニヤニヤしながら話しかけてきた。



「あぁ?」



ちきしょう。


絶対、俺、今、真っ赤だ。


崇文は、構わず笑いながら、言った。



「クリスマスって、空いてます?」


「クリスマス?何で?」


「陸が亡くなる前に、決まってたライブがあるんですけど……」


「あ、あぁ……わかった」


「マジで!?」


「お前、1日で何回マジでって言うんだ……」



ツッコむと、崇文と一緒に、深音も笑っていた。


しかし、俺はこの時、大事な事を忘れていた。



俺には、紗江という彼女がいた事を。



やばい。



まずい事に、なった。


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