超能力者は暇ではない
◆小高の秘密
小高の家は駅前の大きなマンションだった。
最近できたばかりらしく、最新のセキュリティが設置されている。
「おいおい……これカード持ってないと入れないマンションじゃねーか!どうやって小高少年の所まで行くんだよ!」
京の言葉に一瞬固まった久保が、引きつった笑みで振り向く。
「……忘れてた……」
京とリオが久保に殴りかかるのに時間はかからなかった。
二人に殴られながら、久保が叫ぶ。
「ちょ……悪かった!悪かったって!!お願いだから許してください」
口と鼻からダラダラと血を流す久保を放し、京が尋ねる。
「仕方ない……おまえ、なんかカードっぽいもの持ってないか?」
「へ?」
「テレフォンカードでも何かのポイントカードでも、この際遊戯王のカードでもいいから」
「カード……こんなものならあったけど」
流れ出る血を拭いながらポケットを漁っていた久保が、カラオケボックスの会員カードを見せてきた。
「よし、じゃあこれ使わせてもらうぞ」
久保から受け取ったカードを左手に置き、その上に右手をかざす京。
彼が何をするつもりか理解したリオは、目を輝かせて京に駆け寄った。
「え、なに?何する気なの?」
わけがわからず混乱する久保の目の前で、京の手に乗ったカードが小さく光った。
「よし、これで大丈夫だろう。リオ、久保、行くぞ」
「はいっ、京様!!」
張り切って京に着いていくリオとは裏腹に、全く状況が飲み込めない久保があたふたする。
「え?え?何?何いまの何?」
「超能力ですよ、超能力!」
京の代わりに返事をしたリオに、久保が目を見開く。
「ちょ、超能力!?何それどこのファンタジー映画!?」
「見てればわかりますよ」
リオは勝ち誇ったような顔で久保を見た。
京を心の底から尊敬しているリオにとっては、京の能力を自慢するのが楽しくて仕方がないようだ。