超能力者は暇ではない
◆隠された組織

京たちを乗せた相沢の車は、警察署を目指して夜の国道を走っていた。

リオは一日中歩き回ったせいで疲れているのか、眠たそうに京の肩に寄りかかってくる。

京はそんなリオを冷たく突き放して久保のほうに押しつけると、相沢の車の中をじっくり観察した。

ミラーの部分には戦国武将の家紋のストラップがぶら下がっており、あちこちに織田信長と思しきキャラクターのステッカーが貼ってある。

車内は先程から大河ドラマの主題歌やサウンドトラックがランダムで流れており、たまに相沢が鼻歌を重ねたりする。

どうやら相沢は歴史オタクらしい。

京は窓の外の流れゆく街灯をぼーっと見ながら、ぽつりと言った。

「久保、おまえはこの事件についてどう考えてる?おまえが有能な探偵であるなら、ある程度はわかってるのか?」

返事はない。

「俺は、外山が言っていたように犯人が人間じゃなかった場合のことを考えてる。ひとりの人間を、大勢の人間が見ている前で消すなんてのはプロのマジシャンしかできねえ。しかし今回は本当に"タネも仕掛けもない"状況で起こった……マジシャンすらできない事を平然とやったのさ、犯人は」

久保は黙ったままだ。

「おい!聞いてるのか!?」

無視され続けて苛立ちを覚えた京が、窓から目を離して久保のほうを見る。

久保は、肩に寄りかかって爆睡しているリオを見つめて微笑んでいた。

「……何やってんの?おまえ」

京が冷めた目で久保を見る。

久保は嬉しそうな顔で京を見ると、「リオくんの寝顔、ものすごく可愛いね」と言った。

「……久保……おまえ、あっち系の人……じゃないよな?」

「え?あっち系って何?」

久保は京の言葉にキョトンとすると、睡魔に負けて意識を失ったリオの腰に手をまわした。

「リオくん……すごくいい匂いがする。シャンプーの香りかな?ふふっ」

リオを抱きしめて怪しい言葉を発する久保を無視し、今度は外山に尋ねる。

「外山、さっきの話の続き、聞いてもいいか?」

助手席で黙っていた外山は、胸ポケットからミントガムを取り出して口に放り込み、ぽつりぽつりと語り出した。

「実は、冬草学園の生徒からも電話があったんです……謎の人物から脅迫の電話があったって」

「その生徒はもしかして1-Bの奴か?」

「はい……1-Bの学級委員の女子生徒です」

「学級委員……?もしかして、野口って子か?」

「はい。ご存知だったんですね」

外山は前を向いたまま、野口からの電話の内容を話し始めた。

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