超能力者は暇ではない
◇人消師の存在

翌朝、京はいつも通りベッドから起き上がるとカーテンを開けて伸びをした。

空は青く澄んでおり、雲一つ見当たらない。

しかし京はどうも眠気が覚めない。

無理もない。
昨日の晩、いきなり一緒に住みたいと言ってきた久保の荷物を運び、しかも久保のために汚かった部屋を掃除して、更には夜食を用意。
普段あまり動かない京にとっては重労働以外の何物でもなかった。

「ったく、久保のやつ……俺の超能力は万能じゃないって何度言ったら理解するんだか……」

欠伸を噛み殺して部屋を出、フラフラの足取りでリビングへ向かう。
リビングのテーブルには既に朝食が並んでいた。

「あっ、おはようございます京様!」

紅茶の缶を開けながらリオが挨拶する。

久保の姿がない。

「おう、おはよう……久保はどこ行ったんだ?」

見れば、テーブルにも二人分の食事しかない。

「ああ、久保さんならさっき出かけていきましたよ。朝食は食べてくるからいいって」

「ふーん」

京は席につくと、スクランブルエッグにケチャップをかけながらリオを見た。

リオはいつもと変わらぬメイド姿で、いつもと変わらない朝を過ごしている。

ふと、リオと目が合った。

「京様……そんなに見つめられると照れちゃいますよ」

「いや、ごめん……人が急に消えるって、どんな感じなのか考えてた」

隣で笑っている人が、突然、なんの前触れもなく姿を消す……。

考えただけで恐ろしかった。

リオはそんな京の考えを察してか、にこりと微笑むと京の手を握った。

「安心してください、京様。僕は京様を置いて消えたりしませんから……」

「リオ……」

「だから京様、今夜こそ僕と」

リオがそう言った瞬間、ガチャリとドアが開いた。

「たっだいまー!いやー、朝の散歩は気持ちがいいねえ」

両手に紙袋を提げた久保が、足でドアを押さえながらリビングに入る。

「なんだ久保、買い物でも行ってたのか?」

京が呆れ顔で言うと、久保が大きく頷いた。

「ちょっと近くの古本屋に行ってきたんだ。もしかしたら人消師に関する資料があるかもしれないと思ってね」

久保は紙袋をソファーに置くと、古そうな本を何冊も取り出してテーブルに置いた。

「これが人消師に関係ある本なんですか?どう見ても童話にしか見えないんですが……」

リオが並べられた本をパラパラとめくりながら呟く。

確かに、どの本も外国の古い童話のようだ。

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