超能力者は暇ではない
◇孤独な戦い


その頃、リオは商店街にある本屋で雨宿りをしていた。

「まったく……京様があんなに冷たい人間だとは思いませんでした……少しは僕のこと、大切に思ってくれてると思ってたのに……完全に自惚れですね」

雑誌を読みながらブツブツ独り言を言っていると、隣で立ち読みをしていた女が急に小さな声で笑い出した。

(なんだこの人……気持ち悪いなあ……)

リオが横目で女を見る。
女は艶のある黒髪を後ろでひとつに束ね、腰に長い紐を巻いた白いワンピースを着ていた。

(変わった服装だなあ……なんかの宗教の人かな?)

なんとなく女が気になり、本を変えるフリをして女を観察する。

女は雑誌を読んでいるようだが、その目は何か違うものを見ているような気がした。
まるで、何か獲物を見つけたような……

(ただの頭がイっちゃった人かな……にしても、なんでよりによって僕の隣に来るんだ……)

早くどこかへ行ってくれないかな、と思いながら女をチラリと見る。

その時、女の口が微かに動いたような気がした。

(ん?なんだ……?)

何かを言ったようだが、よく聞こえない。
もしかしたらまた何か言うのではないかと耳を澄ますと……

女は聞き覚えのある台詞を呟いた。


「私はザイゼン……私に勝てるものはいない……!」


女は小さな声でそう言うと、本を棚に戻してフラフラと外に出た。

(これは……追うしかない!)

リオも本を戻してゆっくり店を出る。
女は商店街の出口へ向かっていた。

「どうしよう、京様に連絡……」

慌てて携帯電話を取り出し、はっとして手を止める。

「……いや、僕はもう京様の力を借りなくたって大丈夫だ!あいつは僕ひとりで片付ける!」

リオは携帯電話をポケットにしまうと、握り拳に力を込めてそのまま歩き出した。

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