超能力者は暇ではない
◆大切な仲間

「ちぇっ、ついてねーなー」

京は電話の受話器を叩きつけながら呟いた。

先程から、小高と関わりを持っていたと思われるスナックやバーの関係者に連絡を入れているのだが、皆忙しいようでなかなか良い返事が得られない。

中には「夜なら話せる」という人もいたが、夜に会いに行くにしても今のこの暇な時間がもったいない。

京はソファにどっかりと腰を下ろすと、溜め息をついて外を見た。

まだ昼間だというのに外は暗く、大粒の雨が窓を叩くように降っている。

「……リオの奴、飛び出してどこ行ったんだか知らねーけど、電話の一本くらい寄越せばいいのに……」

そう呟いた瞬間、玄関の扉がガチャリと開く音がした。

(リオか……?)

タオルを持って玄関に向かう。
そこにいたのは全身びしょ濡れの久保だった。

「やあ!ただいま!」

「やあ、じゃねーよ!おまえビショビショじゃねーか!」

急いで手に持っていたタオルを渡す。

久保はヘラヘラと笑いながら「ありがとう」と言うと、水を含んで重くなったジャケットを脱ぎながら髪を拭いた。

「いや〜、びっくりしたよ!急に雨降ってくるんだもん!今度から折り畳み傘持ち歩こうかなー」

「そうだな……それより久保、及川さんの話はどうだった?」

「え?ああ」

久保は濡れたシャツを脱いで下着一枚になると、それを気にすることなくリビングに向かいソファに座った。

「結構いろんな資料をもらってきたけど、役に立つかは正直わかんない。まあ目を通してみてよ」

久保に渡された資料とメモをテーブルに広げる。
相変わらず雑な字だが、資料と合わせて見れば読めなくはない。

「なるほどな……ありがとう久保、これだけ資料があれば少しは敵に近付けるかもしれない」

「どーいたしましてー」

久保は笑いながらそう言うと、急に真剣な顔付きになって京を見た。

「ところでさ京くん、リオくんはどこに行ったの?」

「リオならさっき勝手にキレて飛び出してったぞ。いつもの事だから心配はいらねー」

「え、喧嘩……?」

心配そうに久保が尋ねる。

「いや、喧嘩ではない。多分そのうち帰ってくるんじゃねーの?」

「……なら、いいんだけど……」

久保が呟いたその時、電話の呼び出し音が鳴り響いた。

京が受話器を取る。

「もしもし?」

『……フフッ、フフフフフ』

電話の向こうから聞こえたのは、聞き覚えのある不気味な声だった。

「!!……おまえ……人消師団の奴か……!?」

京の言葉に久保も立ち上がる。

『あっははは!!よくわかりましたねえ!!さすがは超能力探偵!!』

「おまえ……警察にかけてきた奴と同一人物だな」

『ご名答!!私は人消師団の財前です!!さあ、私の用件はなんでしょう…?』

電話の向こうで財前が悪戯っぽく言う。

「用件……?」

京が言うと、受話器の向こうでクックックと小さく笑う声が聞こえた。

『じゃあヒントを出しましょうか』












『貴方の大切な大切な弟子は、今どこにいるんでしょうかねえ?』



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