超能力者は暇ではない
◇敵、そして味方
「そういえばリオ、おまえを襲ったのはどんな奴だった?」
あれから三日。
一人で見舞いに来た京は、花瓶に花を生けながらリオに尋ねた。
久保は仕事があるようで、今日は病院に来ていない。
「ああ……案の定、財前って奴でしたよ。髪は黒髪でひとつ結び、服装は白っぽいワンピースに紐を腰に巻いていて、なんか馬鹿でかい鎌持ってましたよ」
「鎌?それでやられたのか?」
「いや、僕を刺したのは男でした。剣で後ろからザクッと……」
「その男、どんな奴だったか覚えてるか?」
京の質問にリオが首を傾げる。
「うーん……よく見なかったんですけど、西洋風の剣を持ってて黒い服着てました」
「なるほど……つまり人消師は何人かでまとまって行動してるんだな」
「みたいですね」
リオは伸びをしながら大きな欠伸をすると、思い出したように言った。
「そういえば財前って奴、僕らを消すのは『団長』の仕事だとか言ってました。多分そいつが人消師のリーダーですよ」
「団長?」
京が振り向く。
「ええ。確かに団長と言ってました」
「そうか……」
京は再び窓の外を見ると、キャーキャーはしゃぎながら歩く小学生の集団に目を向けた。
(最近奴ら人消師が何かやらかしたって話は聞かない……が、安心はできない。この街の罪のない人間が消される日が来てもおかしくないんだ)
京はリオの方を向くと、決心したように口を開いた。
「リオ……俺、奴らのアジトを探しに行ってくる」
「え!?」
リオが驚いたように目を見開く。
「時間がないんだ。これ以上人消師を野放しにしておく訳にはいかない。それに……」
京は外を見つめ、深く息を吸ってから再びリオを見た。
「人消師を止められるのは、俺だけだと思う」
京の言葉には、覚悟が込められていた。
「……っでも京様!」
何かを言おうとするリオを京の言葉が遮る。
「人消師は人間じゃない。俺も……人間だけど、普通の人間じゃない。警察や名探偵なんかよりずっと、対等に戦える」
リオは京の服を掴むと、今にも泣き出しそうな顔で言った。
「そんな……無茶はやめてください!さすがの京様でも人間を消せる奴等を相手にするなんて無理ですよ!」
「仕方ないだろう」
京はそう言い放つと、リオの手を優しく握って微笑んだ。
「俺は、リオも久保も失いたくない」
京はゆっくりとリオの手を離すと、病室を出た。
「……京、様……ずるいですよ……」
リオは自分の手を見つめたまま、しばらく動けずにいた。