涙と、残り香を抱きしめて…【完】

苦悩《水沢仁side》



《 水沢 仁side 》

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自分の部屋に戻り
怒りで熱くなった頭をを冷やそうと
冷蔵庫から缶ビールを取り出し
その場で一気飲み。


「はぁーっ…」


マンションの玄関であの2人を見るまでは
星良に謝るつもりでいた。


アイツになんの相談もなく
勝手にモデルを決めてしまった事を後悔してたからだ…


そもそも、アレは俺の意思ではなく
社長が世話になってる人から頼まれ
あのモデルの理子を連れ来たからで…


当然、俺は納得出来ず
星良の意見も聞いた方がいいと
散々、社長に意見したが
どうしても断れないと社長に泣きつかれた。


渋々、理子をモデルに決め
星良に会わせたが、アイツがあんなに怒るとは
正直、思わなかった。


それだけ今回のプロジェクトに掛けているんだろう…


そんな事にも気付かなかった俺は
上司失格だな。


空になったビールの缶を、力任せに潰すと
シンクの中に投げ捨てる。


でも…
だからと言って、なんで成宮と飲みに行くんだ?


成宮の気持ちに気付いてないはずは無いだろ?


ソレでなくても、変な酒癖があるんだ。
無防備にも程が有る。


再び乱れる心


完全な嫉妬だった…


大人気ない醜い嫉妬。


そんなの分かってる。


それでも腹が立って仕方がない…


星良と別れようと思ってるくせに
こんなに嫉妬してて、本当に別れられるのか?



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