天使に逢えた日
『天使が舞い降りて来ます』



「なにそれ?」


思わず声が出てしまった。 
帰宅途中に寄ったコンビニで何となく手に取った月刊誌に
載っていた占いの結果は
時節がら『バレンタインの運勢』だった。


占いがどれほどアテにならないものかなんて
この年齢になれば嫌と言うほど知っている。
だからいつも適当に読み流して終り、なんだけど
引越しを控えているとなると
何となく方角や時期なんてのが気になったりするもので
ついその手のページに目が止まってしまうこの頃だ。


「バレンタイン…か」


小さな呟きが零れて落ちた。
忙しく色気のない淡々とした日々を送る私だけど
バレンタインが気にならないわけじゃない。
気になる男性の一人くらいは居る。
そう、気になる……のだ。
もちろん好意があるから気になるのだけど
それが恋愛感情であるところの好きなのかどうかは
正直よく分からない。
学生の頃のように わーっと盛り上がって燃え上がるような
熱い想いとは違う。じわじわと高まりながら
熱くはならず適温を長く保つカイロのような想い。
ほっこりじんわりしたその想いを抱えているだけで
癒されるというか心地よいというか。


何なのソレ?と言われてしまいそうだけど
事実だから仕方がない。
好きな人ができると昔からこんな感じだった。
片想いのままでいることが嫌いじゃなかった。
一人で密かにその人を想ってきゅんとしたり
ときめいたりするほうが楽しかった。
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