これからの季節に~新雪初めて踏むきもち~【完】
1夏、飽きるまで
クリタがその鏡を発見したのは、夏だった。

「あーあ、暇だなあ…」
クリタはソーダアイスを食べながら、実家の実家、おばあちゃんの家の畳の部屋で寝転がっていた。
時折ソーダアイスをわざと溶かすように舐めながら、クリタは学校の事を考えていた。
あれもしないといけないし、それはそうだし、あんなのだってあるし…。
ソーダアイスを一本食べ終わり、クリタは立ち上がった。
物置の整理をしてくれと、庭の草むしりをしている両親に頼まれたのだった。
「さあーて」
クリタは一時間ほどかけて、物置を整理した。
そして最後に見つけたのだ。
女の子が、こちらを見つめている姿が映っている鏡を。
見つけた瞬間、クリタは思わず言った。
「わっ」
女の子は言った。
「あ、あの」
「え、何?」
「こんにちは」
「あの、あなたのお名前なんですか?」
「あ、あの」
「僕、クリタです」
「私サヤカです。よ、よろしく」
「…よろしく」
クリタはもう恋に落ちていた。


サヤカがその鏡を見つけたのは、春だった。
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