理由なんてない

「真」の正体に迫る

私は真と近くのカフェに、行った。
こんな得体のしれない奴を、家に入れてはいけないと思ったからだ。
そして適当に食べるものを、頼んだ。
……。
真はさっきから、私をずっと見ている。
怖い怖い怖い。
なんなのよいったい!?
私はどこもおかしいところなんて、ないわよ!?(多分)
私は真から顔を背けて、メールを打つふりをした。
「瑠璃子……」
低い優しい声にビクッと体をふるわせて私は、ゆっくりと携帯の画面から顔を上げた。
愛おしそうに、私を見つめる優しい視線。
体が熱くなるのを感じた。
……やっぱり私、おかしい!!
今まで、男の子に見られても何とも思わなかったのに!!
なんか分からないけど、体が熱いよ!!
そんな私の気持ち、おかまいなしに、真は言った。
「瑠璃子」
ビクッ。
体がとびはねた。
頬が赤く染まるのを感じる。
真は私の、肩より少し長い髪の毛に、優しく触れて言った。
「あんなに、長くて綺麗だった髪……切ってしまったのか?」
「え!?……え、ええ。まあ、伸ばすそうと思えば、いつでも伸ばせるもの」
一瞬びっくりしたけど。
そうよね。
お母さんは、美しい長い黒髪だったのよね。
私も写真の中のお母さんに見惚れて、中2までは長かったけど、そのときちょうど陸上部での大きな大会があったから、邪魔臭くてバッサリと切ってしまったのよね。
………そろそろ、伸ばそうかしら?
「しつれいします〜。お紅茶2つと、ケーキセットでごさいます〜」
店員さんの声に、我にかえった。
私は、私の髪に触れている真の手を、振り払って、1つ咳をした。
そうよ。
そろそろ、本題にはいらなくちゃ。
私は机に置かれた、紅茶を1口飲み、真を見つめた。
真も私のことを、見つめた。
そして大きく深呼吸して、私は言った。
「真。私、記憶がないの」
真は、大きな目を見開いた。
真は何か言おうと口を開けたが、最後まで私の話を聞くことにしたのか、口を閉じた。
そんな真を見て、私は話を進めた。
「私、あなたに会うまで、あなたのことを忘れていたの。結構前に、発作で倒れたのが原因だと思うわ。……でも。私あなたに会って、少しだけ思い出したの。
あなたと、出会った日のことを」
私は真とお母さんの、関係なんかわからない。
それなのに、お母さんのふりをしたって、いずれボロがでる。
それなら記憶喪失っていうことにしたほうが、効率的にもいいし、ばれにくいはずだわ。
さあ。
あなたは何者なのか。
真の正体、あばいてみせる。
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