これからは…

嫌いなもの

パコーン

と乾いた音を立ててボールが飛んでいく

「いつもより気合入ってんじゃない」

「まあね」

バックのベンチに座っている莉彩の声がする

バットを構え直してもう一度

跳んできた白いボールに向かってバットを勢い良く振る

終業後、莉彩に「ちょっと付き合ってよ」と声をかけたしるふは、今

バッティングセンターでホームランを狙っている

「いい加減教えてくれてもいいと思うんだけど」

「何が」

海斗に教えてもらったフォームを意識しながらボールを追う

「医院長室で何があったか」

あの後やけに元気だったじゃない

皆心配してたわよ

ブン、と勢い良く振ったバットはしかし、ボールの上を行く

はあ、と息をついてから

「ねえ、莉彩」

バットを構える

「何」

「ちょっと愚痴聞いてくれる」
< 30 / 105 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop