もっと美味しい時間  

     ※慶太郎と明日香


「京介、今日は悪かった。あそこの社長、お前のこと気に入ってるからさ」

「別にいいさ、仕事だからな。それよりどうする? 一緒に迎えに行くか?」

土曜日の商談を終え車に乗り込むと、京介にそう聞かれる。
今日は百花が引っ越してくる日。荷物は明日届くのだが、百花と何故か若月が一緒に大阪にやってくる。

「おい、何で若月が来るんだよ? お前たち、付き合ってるのか? このところ本社出張に頻繁に行くのは、若月に会うためか?」

「慶太郎、お前は美和さんの保護者か? 大人の男と女がどうなろうと、お前の関与するところじゃないだろ」

京介が眉間にシワを寄せて、露骨に嫌な顔をした。
別に若月の保護者のつもりはない。たたあいつは、百花が大切に思っている先輩だ。京介の毒牙にかかるのを、黙って見てるわけにはいかなかった。

「本気なのか?」

「…………」

「おいっ、京介っ!」

「ったく、お前は……。本気だよ。大切にしたいと思ってる……って、この歳になって、こんなこと言わすなよ」

少しだけ顔を赤くして頭を掻く仕草を見せると、顔を窓の方に向けてしまう。
京介のこんな姿、初めて見たかもしれない。
これなら大丈夫かと安堵し携帯を確認すると、百花からメールが入っていた。

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慶太郎さん

もうすぐ大阪です。
今晩からお世話になります。
ちょっと早いけど、新婚さん気分を二人で
満喫しましょうね♪

百花
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相変わらず、可愛いことを言ってくるな、百花は……。
そのメールに満足して携帯を切ると、京介にマンションへ向かうよう指示した。
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