研修の夜
はじまり
「いろいろ大変だったけど、明日で研修終わりかと思うとちょっと寂しい気もするよね」

「ね。最初は早く帰りたいって言ってたのに変な感じ」



研修最後の夜、私のグループは一番最後まで研修室に残って明日の準備をしていた。


私の入社した会社は、入社式の直後から合宿施設のようなところに5日間缶詰めで新人研修が行われる。そこでは分厚いテキストが何冊も配られ、厳しい講師から研修を受けるわけだけど、社会人としての心得、お客様との接し方、自社商品についてなど学ぶことが山ほどあった。


テキストを使う座学はもちろん、声出しやら模擬練習やら身体を使うことも多く、生ぬるい大学生活を謳歌していた私にとっては結構過酷で逃げ出したくなりそうな内容。


だけど、グループのメンバーが良い人揃いだったので、耐えられたように思う。


新入社員の数は30人。男女の割合はおよそ2対1。研修はそこから無作為に分けられた6人ずつのグループで競う形式になっていた。

そのグループ対抗戦のせいか、短い期間だけど6人は自然と仲良くなる。私のグループも例外ではない。

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