もう春は来ない
☆ 初恋 ☆


 昨日――


「なんだよなんだよ!山下って実は可愛くね?」

 サクラが舞う公園で、アイツが浮かれたように先に口にするから、

「ま、まあな…」

 なんて、気のない返事しか僕にはできなくて。


 本当は、


――なんだよお前もか。

 と、少し、悔しかったんだ。



 だって、キミがあまりにも可愛いかったから。

 だって、弟を見つめるその顔が、とても優しそうだったから。

 だって、キミの笑顔は、春のように柔らかで、暖かかったから。



 僕らは、キミに見つからないように、公園の入口にある藤棚でしばらくキミを目で追った。

「やっぱ、女子は笑顔だって、なあ。あの笑顔!見てみろよ!これはまさしく天使だぜ?あの意地悪オンナ共とは比べもんにならねえよ」


 僕は、コイツのこの感性が、かなり気に入っている。
 

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