心をなくしたセブンティーン
浅井家

わたし、ななかです






「さきちゃん。今日でお別れだね」





―小学二年生の11月。
わたしは生まれ育ったところから引っ越すこととなった。





だいすきなさきちゃんとの別れ。





だいすきなおうちとの別れ。





新しい学校では友達ができるかな。





とか、





一軒家、たのしみだな。





とか。
喜びや悲しみ、いろんな感情が私には詰まっていた。





車にのっている私を行かせないようにさきちゃんは必死に車の窓越しで私の手を引っ張る。





そして車がゆっくりと動き出した。





「いかないで!!ねえ、ななかちゃーーーん!」






しかし、さきちゃんと私の手はほどけてしまった。





車の中で私はずっと堪えていた悲しさを我慢できずにひたすら泣いていたのであった。





―――――――――――――――





―ガチャッ






新しい家のドアをはりきって開けた。






そこには今までなかったカウンター付きのキッチン、階段、広いリビングが広がっていた。






「団地とは大違いだね!ねえちゃん!」






私と四つ離れた雅人がキラキラした目で私にいう。





「そうだね!あ、おへやいく?」





「へや?あ、そっか!ぼくたちにもおへやでにたんだもんね!」






団地にはないものばかりが詰まった一軒家に私と雅人は目を輝かせていた。






明日新しい小学校に行く不安さえ忘れてしまうくらい雅人とさわいでいた。






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