「シュン、梗也、梗也、タカト、シュン、シゲ、梗也、梗也」


黒板の前に立ったサヨが、折り畳まれた紙を広げながら名前を呼ぶ。
なんだか変な呪文みたい。
それを聞いて黒板に正の字の印をつけるのは、制服を着崩した江藤君だ。


「これで最後。
梗也。以上!」


最後の紙を開いて名前を読み上げて、サヨは黒板を振り返る。
最後に江藤君が黒板に印をつけ終えるのを確認して、サヨは教室を見渡した。


「梗也が二十票。シュンが十五票。
……と言う訳で。
今年の文化祭の芸能科クラス劇の主役は、天宮梗也君に決定です!」


雰囲気を盛り上げるように声を張り上げたサヨに呼応して、教室のみんなもワアッとノリのいい歓声を上げた。


それを聞きながら、私は頬杖をついて溜め息をついた。


投票なんかしなくてもわかり切っていた結果だけど。


「って、本人いないのに決めちゃっていいのかなあ……」


教室の真ん中の席でそう呟くと、サヨには聞こえたみたいで、いいのいいの、と笑い飛ばされた。


「梗也も文化祭は楽しみにしてるし。
万が一練習不足でも、プロなんだから普通にやり遂げるでしょ」


能天気に笑うサヨの言葉に、教室のみんなもうんうん、と頷く。


それはそうだろうけど、と、私も肩を竦めた。

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