《続》跡目の花嫁さん~家元若旦那の危ない蜜月~
「いえ、あ…あの時のコト、思い出して言ってくれているんですか?」


「あの時?んっ…柏木さんとは初めてじゃあ…」



彼は完全に忘れていた。
私は今でも、鮮明にあの時のコトを憶えている。

「百合の花です」


「百合?…あ、もしかして、君は百合の君!?ゴメン…思い出せなかった」


「いえ、9年も昔のコトですし、忘れてるのは当然ですよね」


私の瞳には、無意識に涙が零れ落ちた。


憧れの人から、結婚を前提に交際してくれと言われてるのに。

私の処女を奪っておいて、忘れてる不実な所が許せなかった。



「ゴメンなさい…私…失礼します!」


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