曖昧ショコラ【短】
篠原はいつだって、いとも簡単にあたしの心を翻弄する。


逃げたい。


だけど、逃げられない。


むしろ、本当は逃げる気なんて無いのだ。


きっとまた、ドロドロに溶かされる。


そんな予感に体の熱が益々高まって、もう何も考えられなくなっていく。


いつからあたしの事を好きだったのかとか、どんな気持ちで【失恋ショコラ】を書いたのかとか…。


訊きたい事はたくさんあるのに、今はただ近付いて来る篠原の唇を受け入れる事しか出来なくて…


曖昧なままのそれらは、あの夜とよく似たほろ苦いチョコ味のキスと一緒にそっと溶けていくのだった――…。





             END.


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