矢刺さる先に花開く
縁談


保元の戦より一年。


未だに経子宛ての文は多い。


周りの者は皆、早う経子を誰ぞの元へ参らせた方が良いのでは、と思うておった。


そのことは経子自身が一番良くわかっていた。


(いつまで経っても私がここへ留まっても、周りに厄介になるだけ。どなたかの元へ参った方が良きこと、というのはわかっております…)


ただ。


経子は忘れられないのだ。


(重盛さま…如何御過ごしでしょうか?)


< 42 / 164 >

この作品をシェア

pagetop