シークレット ハニー~101号室の恋事情~


「まだそんなところにいたんですか。
どうぞ、こちらに座ってください」
「あ、はい」


示されたのは、ソファ。
皮のソファに座ると、前にあるローテーブルに紅茶の入ったティーカップが置かれた。


「すみません」
「いえ」


斜め前に座った五十嵐さんが、「この紅茶、ほんの少しですがピーチの香りがするんです」と微笑む。
あ、本当ですね、なんて言いながら一口飲んで、おいしいと感想を告げると、五十嵐さんが安心したみたいに笑う。

その笑顔を見て、なにくつろいでるんだってハっとした。

っていうか、お説教されにきたハズなのに、なに紅茶なんか入れてもらって談笑してるんだろう。
なんでだか話を切り出そうとしない五十嵐さんを不思議に思いながら、「あの」と切り出したのだけど。
それと同時くらいに、五十嵐さんが「あ、そうだった」って立ち上がった。

そして「もらい物のクッキーがあるので、食べてってください」と微笑む。



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