シークレット ハニー~101号室の恋事情~


「まさか同じ会社に入るとはなー。俺も雨宮さんの顔見てびっくりしました。
今度卒業アルバムでも持ってきて盛り上がりますかー」


“野田さん”の言葉に、ひきつった笑顔も作れそうになくて、顔をそむける。

でも、この場で昔みたいに名前で呼ばれなくてよかった。
まぁ、“野田さん”は、大学院出て社会人になったわけだし、それぐらいの常識はあって当然って言えば当然なのか。

高校時代の無神経さが印象強く残っているから、どうしても不安になっちゃうけど。

彼と私が付き合ったのは、高校二年の春から高校三年の夏までの一年ちょっと。
想いが残ってるわけでも、変な別れ方したわけでもないけれど。
できれば再会したくなかった。

しかも、会社でなんて。同じ課だなんて。
来週からの仕事を考えると、頭が痛い。



「葉月、待てって」


一次会の帰り、二次会に向かった群れから抜けてひとり反対方向に歩いていると、後ろから声をかけられる。
なんとなく声をかけてくるような気はしていたから、軽くため息をついてから振り返った。



< 2 / 313 >

この作品をシェア

pagetop