最悪から始まった最高の恋

第2話 最悪の朝

 程よい感じのスプリングに、サラサラの滑りのいいシーツ。広いベッド……。
 なんだかものすごく気持ちが良いなぁ〜と彩菜は思った……。ものすごく熟睡したと思う。

 今住んでいる線路沿いのボロアパートは、列車の通過する音が深夜までしてとてもうるさいし、終電も終わってやっと静かに寝れると思ったら、夜中の架線工事が始まり、カンコンとうるさくてイライラ状態……。あのアパートに引っ越してから熟睡した事が無かったなと思った。

 それにペッタンコの安物の布団は寝心地も悪くて、安物のシーツは滑りも悪く、洗濯する度に所々糸がつれてしまい、毛玉みたいな糸の玉が出来て、それが肌にチクチク刺さる感じで、気分がスッキリしない。
 
 なのに、なのに、シルクのようなシャキッとした滑りのいいシーツだ……。
 それに今日はとっても静かで、ああ……。毎日こんな日だったら清々しくシャッキリと目覚められるのになぁと思いながら、猫のようにうーんと伸びをしてから目を開けた。

 暫くボーッとしていた……。なんだかいつもと様子が違う気がした。なんでかなぁ。あれ、自分の部屋じゃない感じがする……。
 さっきまでとてもいい気分だったのだが、目を開けた途端に頭はガンガンするし、胸がムカムカするし……。頭が上手く回らなくて、暫く考え込んでいたと思う。
 
 ボーッと遮光カーテンで隔てられて、薄暗い部屋のぼんやりとした天井を見つめていて、段々記憶が定まり始めてきて、ハッと気がついた。

(あれっ? ここは……。私の住んでいる部屋と違わない?)

 うん。確かに違う……。って……。なんかスースーして私、何も着てなくない? そしてこの広ーいベッドの中にもう一人自分以外の何かが居ると言う事に気が付いた……。
 慌ててベッドサイドテーブルのライトスイッチを入れてみて驚愕した……。

「う……そっ」

 何で円城寺さんがベッドに居るのよ。同じく何も着てないし……。

「うそ――――――っ!!」

 彩菜は大きく叫んだ。
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