最悪から始まった最高の恋

第3話 あの日の真相

 バタンと出て行った彩菜に暫く唖然としていた円城寺……。
 それから少しして我に返るとボソリと言った。

「あのおでん娘はホステスじゃなかったのか……。怨念で呪われて会社が潰れろだって?! 全く……。成田社長の餌食になりそうだったから救出してやったのに……。ちょっとビビらせてやろうと思っただけで、何にも無かったし……」

 さっきの迫力あるおでん娘の光景を思い起こし、円城寺はフッと笑った。昨日のドレス姿も綺麗な子だと思ったが、さっきのスッピン顔も肌が綺麗で可愛かったな……。


 * * * * *


 一方家に帰ってから彩菜は布団に潜って大泣きした。そして寝込んでしまった。

(ああ――――っ。凄いショック!!! もうお嫁にいけないし。父ちゃんに申し訳無いし……)

 あの見下したような冷ややかな笑を浮かべる円城寺の顔が浮かんでは消え、浮かんでは消え……。憎い……。本当に憎らしい!!!

 ――だけど……。確かにいい男だった……。
 
 そして……。一瞬そんな事を思った自分にハッとした。

「バカバカバカバカ……。彩菜のバカっ!! なにそんな事思ってんの。彼奴はか弱き子ウサギを食い殺す、ジャッカルなのよ!! 彩菜のバカ!! 」

 それからまた布団に突っ伏して泣きじゃくった。

 精神的にもボロボロ状態になって、泣き疲れて眠ってしまったらしい……。気が付けば日もどっぷり暮れて、部屋の中は薄暗くなっていた。
 モソモソと起き上がって、部屋の電灯のスイッチの紐を引っ張った。薄暗かった部屋がパッと明るくなり、眩しい……。それに、泣腫らしすぎて目が痛くてしょうがない。

 バイブにしてミニテーブルに置き去りにしていた携帯が、ピカピカと点滅してる。画面を見れば、お店のママからの電話が何度も入っていた。
 メイン料理を作る料理人も居ないし、今頃店の中がてんてこ舞いだろう……。今まで具合が悪くても頑張って店に出て根性で乗り切り、迷惑をかけた事は無かった。でもいいんだ。ざまあみろってんだ!! ママが私にした酷い事に比べたら、店に穴を開けるぐらい何でもない事でしょう? あの報酬の10万円も要らないし、もし最後のお給料が出なかったとしても、もういいわ……。

 ――コン……コンコン……。

 携帯の画面をぼんやりと見ていたら、玄関の扉を叩く音が聞えて来た。
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