朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
第十四話 暁の苦悩
 柚は暁を部屋に迎え入れてからも表情が優れなかった。


もちろん、貴次のせいである。


貴次が突然豹変して、柚の唇を奪って、変なことを言ったからである。


(私のものになりなさいって、なんで命令口調なんだ! そもそも私は物じゃないし、誰のものでもない!)


 柚は思い出せば思い出すほど腹が立ってきた。


最近、貴次のことでよく腹が立っていると思う。


(なんなんだ、あいつは! なんであんなことするんだ!)


 一方、柚が肘掛椅子に肩肘を乗せて手の平で顔を支えながら、怒りの含んだ溜息を吐いているのを、気が気でない様子で見ていた暁は、一人頭を悩ませていた。


(最近の柚は、一体どうしたというのだ。

突然塞ぎ込んだり、機嫌が悪そうだったり。

何か深刻な悩みでもあるのだろうか。

でも、尋ねても教えてくれぬし。

余に言えないことなのだろうか。

余に言えない悩み……。

はっ!

この苛々した不機嫌な様子!

これは女性特有の月のものが関係しているのではないだろうか!)

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