朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
第十五話 偽りの妃
次の日、柚は気を重くしながらも稽古に向かった。


稚夜と約束しているので、行かないわけにはいかない。


貴次の計らいで清涼殿まで由良に付き添われて堂々と行くことができたが、顔を隠し身分を誤魔化しての移動ではあった。


帝の妃が後宮を出て自由に歩きまわることは快く思われていなかったし、貴次に稽古を受けているというのは暁には内緒だった。


暁にどんどん秘密事が増えていって、後ろめたい気持ちになる。


けれど、帝の妃が稽古を受けるなど言語道断な話で、暁だけでなく周りの目も偽りながら生活しなければいけないのは、なんとなく気詰りだった。


庭院には、すでに貴次と稚夜がいて、二人で稽古をしていた。


先に柚に気付いたのは貴次だった。


貴次と目が合うも、柚は咄嗟に視線を避けた。


「姉さま!」


 柚に気付いた稚夜は、大きな声で柚を呼ぶと嬉しそうに柚に駆け寄った。


稚夜が膝に抱きつくと、柚は優しく稚夜を抱きとめた。
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