柚は平城宮の内裏の一角に部屋を与えられた。


部屋といっても一軒の屋敷で、池付きの庭園まである。


居室の数は一つだが、三世帯がここで宴会を開けるほど広い。


奥座敷には低めのベッドがあり、横には屏風と衝立が飾られ、布張りの燭台が角に置かれていた。


そしてそれらを隠すように、薄絹の天蓋がカーテンのように床まで垂れている。


居間には赤銅色の花梨材を使用した椅子やテーブルも置かれていたが、柚は豪華すぎる部屋にくつろぐことができず、ひのきの床の上に敷かれた熊皮の上でちょこんと正座していた。


 身なりも整えられ、腰まで届く長い髪(もちろんかつら)を垂らし、見事に着飾った柚であったが、顔はむすっとした様子でふてくされていた。


わけも分からないまま連行され、気の遠くなるほど広い楼閣に、いくつもの舎殿を通り過ぎ、迷路のような渡殿を歩いてようやく柚の部屋に辿り着いたのだが、余りの広さと厳重な警備に逃げ出すことは不可能だと思い知らされた。


 着いたら着いたで、今度はすぐに湯屋に連れて行かれ、幾人もの女たちに身体を洗われ、あれよあれよという間に上等な絹の衣装を着せられた。


髪が短い女は女ではないと言われ、無理やりかつらを被せられ、もう嫌だと心がくじけそうになると、再び部屋に戻されて、枢(くるる)に施錠具を引っ掛け、鍵をかけられ閉じ込められた。

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