もうすぐ帝がお出ましになるというので、由良は部屋を下がった。


広い部屋に一人きりとなった柚は、白い寝着に漆黒の長い髪(かつら)を垂らして、部屋のど真ん中で正座をしながら、目を瞑り暁が来るのを待っていた。


背筋を伸ばし、深く呼吸をして精神統一をする。


それは、いつも剣道の試合前に己の集中力を高めるために行ってきた行為だった。


暁に言ってやりたいことは山ほどある。


柚はまるで、これから戦いに挑むような心持ちで暁を待っていたのである。


 衣擦れの音がする。


柚の部屋に向かって歩いてくる気配を感じる。


衣擦れの音は二人。


一人は滑るような足取りで、もう一人は大股で闊歩している。


そして二人は柚の部屋の前で足を止めた。


(……来た)


 暁の御前を滑るように歩き、道案内をしていた小柄な采女は、柚の部屋の扉にかけられた施錠具を外した。

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