朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
采女が頭を下げながら扉を開けると、白装束の寝着に淡い象牙色の長衣をまとった暁が悠然と佇んでいた。


柚は、会った瞬間に不平不満をぶちまけてやろうと意気込んでいたはずなのに、声を発することもできず、その圧倒的な迫力に押されていた。


髪をおろしている暁は、初めて会った時の女装していた姿を彷彿させたが、凛とした眉と目鼻立ちが男らしさを醸し出していた。


整った美しい顔をしているが、今の暁は男にしか見えない。


女々しさを露ほども感じさせぬ力強いオーラを放っていた。


その力強い眼力で睨まれたら、どんな屈強な男でもたじろいでしまう迫力がある。


暁が部屋の中に入ると、采女は扉を閉め退出した。


部屋の中で二人きりになった柚は、蛇に睨まれた蛙のように、身がすくんでしまい悪態の言葉すら出ない。


暁はこんなに豪胆のある雰囲気の男だったか、柚の知っている暁は飄々とした軽いイメージだったので、尚更驚いた。


女装した時といい、暁は自在に雰囲気を変えられる男なのかもしれない。


 柚が圧倒されながら暁を見上げていると、柚と目が合った暁は先程の雰囲気から一変して、ぱあっと表情が明るくなった。
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