朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
 そして由良が出て行くとすぐに入れ替わるようにして暁が部屋に入ってきた。


暁は柚の姿を見ると嬉しそうに微笑んだが、柚の無防備な格好を見て、目のやり場に困ってしまった。


勘のいい暁は、これも侍女の策略であるとすぐに気が付いた。


確かに暁としては大歓迎の格好であるが、手は出さないと約束してしまった手前、柚の瑞々しい素肌のチラ見せは、目に毒以外の何ものでもなかった。


しかも柚本人は、少しくらい肌が見えようが全く気にしていない様子なので、尚更たちが悪い。


「暁、腹減ってるか?」


「減ってはいないが、なぜだ?」


「これ、由良が暁に食べさせろって置いてったんだ」


 柚はテーブルに置かれた黒椀と御酒を指さして言った。


暁が黒椀の蓋を開けると、湯気が立ち昇った。


「これはなんだ?」


「山芋を摩り下ろしたやつらしいぞ。精がつくからとかなんとか言ってたな」


「精……」


 暁はなんともいえない顔で黒椀を見つめた。
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