重なる身体と歪んだ恋情
しかし、八重の台詞で千紗様も悟ったのだろう。

奏様と八重の関係、そして葛木のことも

だからこそ一度は聞いたもののしつこく聞いては来ない。

子供だと思っていたがなかなか聡い。

世の中には聞かなくていいことに溢れているのだから。

それを身をもって知ってる彼女に多少なり同情はしてしまうが……。


しかし、八重とのことを隠そうとしない奏様の考えが分らない。

千紗様から離縁を申しだされても仕方の無い状況に陥るというのに。

いや、それもないか。

彼女は借金のかたに売られたお姫様。

どんな状況になっても彼女はここに居ないといけないし、帰る場所すらない。

だからなのか?

夜毎女性の香りを纏って帰るのも、シャツに口紅をつけさせるのも。


本当にどうしようもなく悪趣味な方だ。


そんなことを再認識してしまうと、


「如月、今日の焼き菓子はなんて名前だったかしら?」

「スコーンと言うものでございます。英国の朝食などに食されるとか」

「そう、もう一度食べたいわ」

「覚えておきます」


彼女の願いなら何でも叶えてあげたくなってしまう。


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