重なる身体と歪んだ恋情
蝉時雨


「もっと、私を愛して――」




そう口にする彼女を真っ白なベッドに押し倒して傷の無い頬に口付けを。


そして布越しに彼女の胸に触れる。




「あ……」




それだけで彼女の身体はピクリと震えた。


当然だろう。


あんなにも乱暴にこの身体を陵辱したのは誰でもない私。


その私に触れられて気が休まる筈もない。


それでも彼女に触れたくて首筋に口付けを。




「……っ」




彼女の息を飲む声が私の耳を掠めた。


真っ白で透き通るような肌。


この肌に傷を残した私の罪はどのくらいだろうか?


彼女の心に深い傷を刻んだ私の罪は、


恐らく一生消えることは無いだろう。


けれど、怯える彼女を見てさらに彼女を犯したい衝動に駆られる。


例えばこの硬いベッドに彼女の四肢を縛り付けて拒むことも許さずに体を繋げて――。


そんなことを考えながらも怖がってる自分がいる。


無理矢理抱いた虚しさはもう既に十分すぎるほど味わっているから。


あの時をもう一度繰り返したくは無いから。


カツンと彼女の手から何かが床に落ちた。




「千紗さん」




強張った彼女の顔が私に向けられる。




「なにか――」




落ちましたよ。


そう告げたかったのに、その落としたものを見て声が止まってしまった。


それはあの火事の最中でも手放すことの出来なかったペンダントで……。


あの男からの贈り物なんだろうか?


そんな考えに心の中はどす黒いもので満たされそうになる。


私の声に彼女もそれに気付いたのか、体を起こしてベッドの下を見て、




「あ……」




と声を上げた。


そのペンダントはロケットで、中身を下にして開いて。


千紗の顔に驚きの表情が張り付いている。


震える指でそれを拾い上げて――。
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