オートフォーカス

3.冗談だと思ってる?

大学生活の1年め、人生において大きな変化をもたらした進学は夏を過ぎるころには当たり前のようになってしまい、多少の刺激を受けながらもいつの間にかい毎日は淡々と過ぎていった。

講義にサークルにバイト、ある程度固定されてきた生活スタイルはそれなりに充実している。

熱くなったら薄着になり冷えると感じたら上着を足してみる。

少し厚手の生地の方がいいかなどと考えている間に、いつの間にか秋の名残は消えて完全な冬になっていた。

吐く息が白くなる季節、そうそう汗をかくことはないと思っていたが。

「おーいバイト!それ終わったら布団運びやぞ!」

「はいっ!」

「ほらほら、早よせな次々つかえとんで!」

「はいっ!」

今の彼らには半袖短パンがよく似合う。

聞き慣れない訛りに戸惑いながらも威勢の良い返事だけは疎かにはしない。

決して大きな足音をたてないように館内を走り回る篤希たち、この老舗旅館の雰囲気を壊さないようにと念に念を押されたことを忠実に守っていた。

そう、篤希たちは今、裕二が言い出したアルバイトに来ているのだ。

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