あの事故から五年が過ぎ――。

 胸の中に広がる寂寥《せきりょう》感も、千賀さんが傍にいてくれたおかげで、時を重ねるごとに宥められていった。

 私は二十歳になり、短大を卒業したあとは保育士の道に進んだ。妹は十七歳、高校二年生で学校が終わったあとはファミレスでアルバイトをしている。私も高校のときはカフェでアルバイトをした。必要なお小遣いくらいは自分たちで稼ぎたかったから。

 そして今年三十八歳を迎える予定の千賀さんはというと、相変わらず忙しいのだけれど。

 ただいま桜真っ盛りの、四月の中旬。その日早番で帰宅していた私は夕飯の買い出しに行こうとしていたところ。何の前触れもなしに千賀さんが帰ってきて、私にサプライズをくれた。

「ただいま」
「おかえりなさい! 長い間、出張お疲れさま」

 抱きついてしまいたかったのを押さえていると、千賀さんの方からぎゅうっと抱きしめられる。

 私の胸は同じだけきゅんっと締めつけられて、千賀さんの匂いに頬を埋めながら、背中に手を伸ばす。

「あぁ、やっと帰国できたよ」

 ぽんぽんと頭を撫でられて、私はまだそうしていたかったけどすっと頬を引き離した。

「じゃあ、コーヒーでも淹れるね。ゆっくりやすんで」

 私はキッチンに立ってさっそくおうちカフェのエスプレッソマシンに手を伸ばす。飴色のこれは理沙と一緒にパンのシールを集めて応募したのが当たったのだった。カフェと同じだけとは言わないけど、それなりに美味しいコーヒーを淹れられる。

 千賀さんが久しぶりに帰ってきたときには、できるだけ尽くしてあげたい。そのアイテムの一つだ。

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