「大丈夫だ、俺がおまえの傍にいるから」

 どんなことがあってもこの腕があれば大丈夫。この人の傍にいれば何も心配することはない。彼に抱きしめられたとき、私は人生のすべてを預けたような気さえした。


 私が十四歳の時。クリスマス間近という或日。仕事でニューヨークを訪れていた両親が飛行機の事故で亡くなった。

 残された私、奥宮藍《おくみや あい》と三つ年下の妹、理沙《りさ》は、親族の話し合いにより、神戸に暮らしている、良信《よしのぶ》伯父さんの家に行くことが決まり、新学期に合わせて転校できるようにしよう、と伯父さんは提案してくれた。

 そんな親族の話し合いの場が自宅でなされて一段落する頃だった。

「その話、待っていただけませんか」
 突如、大きな男が息を切らして入ってきた。
「君は、千賀くん」
 伯父さんが目を瞠らせる。

 彼と、傍に仕えていた秘書が共に頭を下げる。
「この度は……」
 彼は、両親の古くからの友人である千賀彰祐《ちが あきひろ》さん。
 訃報を聞いて海外から急いで来ても、彼が駐在していたドバイ方面からは日にちがかかる。

 普段は整えてある黒髪もサラサラと無造作のまま、礼服のボタンさえ留まっていない。和室の間では屈まなければならない高身長と立派な体格は、悲しみをまとってその迫力を薄める。彼の涼しげな双眸《そうぼう》はよりいっそう悲壮にくれ、漆黒の瞳は私たちを目に入れて揺らいだ。

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