真冬の花火
 12月23日。街の中はクリスマス一色で駅前には大きなイルミネーションのツリーが設置され、街路樹も色とりどりに輝いている。
いつもは人通りの多くない駅前だが、このツリー祭であちこちから人が集まって活気が戻ったようだ。
友達同士で来ている中高生や家族連れ、恋人同士で寒空の下、露店で買った食べ物を手にイルミネーションを眺めている。 奏子(カナコ)と恋人の直也も寒い寒いと言いながら、商工会議所が出店しているうどんをすすり、ツリー祭を満喫している。
「ガキん頃はもっとツリー祭、盛大にやってた気がする」
「そうなの?」
 底の方に沈んでいる細かくなったうどんを箸で追いかけながら奏子は返事をする。
「夏祭りの方が印象強くて、こっちはあんま覚えてないけど、電飾がもっとそこらじゅうにバーっと…」
 会場に流れ出したアナウンスに負けないように話をしていると、今までピカピカと光っていたイルミネーションが消え、辺りは店の明かりだけになった。

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