不思議の国の俺。
「何だ、ここ……」

「…私が、生まれ育った家。
可愛いでしょ?」

「ま、まぁ…」

「さぁ、入って。」

ガチャ

トランプは何のためらいも無く、

家へ入る。

ってか、当たり前か。自分の家だし。

「ケンジ、何を躊躇してるの?
早く入って。」

「おぅ…」

とは、答えても、こんな状況では、

宇宙人に土産物の菓子を出されたようなもの。

不安である。

「ケンジ、この後の平穏がかかってるの。
入って。」

グイッ

腕を掴まれ、中へと入った。

「すっげ…中までメルヘン…」

「…トランプ?お客さんかい?」

聞きなれない、男の声。

「えぇ、それも、人間よ。」

「何だと…?」

あぁ、もう意味が分からない。

俺が人間ではいけないのか。

そして、部屋の奥から出てきたのは…

白いウサ耳の、男だった。

「ケンジ、私のお父様よ。」

「父ちゃん!?」

あぁ、俺はあの時、何に落ちたんだ。

不思議な世界に繋がる穴?

否。

穴ではなく、運命だ。

そして、決して抜け出せない運命。

………頑張るしか、ねぇか。
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