図書館スイーツ【TABOO 】
図書館スイーツ
 日曜の午前中、人が少ないこの時間の図書館は私にとってのオアシス。

読む本を探し、静かな席をキープすると、私は少し離れた陽当たりのいい席に目をやった。

―――いる。


今日も、あの席であの人が。



本に目線を落としてうつむく彼。柔らかな癖のある髪が太陽で金色に透けて。

真剣な眼差しは、ただ一心に本にだけ向けられている。

本を読む振りをしながら彼を見るのが、私の至福の時間。



最初に見たのは、彼氏とのデートの途中でこの図書館に寄った時。

本を探している時に見つけた彼の姿に目を奪われた。

整った顔立ちはもちろんだけど、幸せそうに読むその眼差しがとてもいい。




私も、あんな目で見つめられたら。そう思った途端、背筋にゾクッとしびれが走った。



それから、特に予定のない日曜日はここに来ている。

彼が私に気付く事は多分ない。けれど、彼に見つめられる瞬間の想像がやめられなくて。

彼氏の事は好きだけど、あの人はスイーツみたいなもの。

別腹の幸せ。

けど、結婚前の女のする事じゃないよね……。



分かってる。分かってるんだけど。

「はぁ……」

思わずため息をついて彼を見た。

あれ?いない?



 
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