わらって、すきっていって。


突然、優しい光がふたりきりの教室を照らす。

校庭のライトアップ、タイミングが悪すぎるよ。ちょっとはこっちのことも配慮してよ。


「……俺、帰るよ。きょうはお疲れさま」


ほら、後夜祭のジンクスなんてしょせん気休め。それが証明できてよかったじゃないの。


なんて、強がってみるけれど。

自分でもびっくりするくらい、ものすごい量の涙があふれて、止まらない。


わたし、振られたんだ。本城くんに、とうとう振られたんだ。

もう、どうにも、がんばれないんだ。


「……うっ、ひっく……、う……っ」


胸が苦しい。膝が震えるし、食べたもの全部吐きそう。

わたし、こんなに本城くんのこと好きだったんだ。自分でも知らなかった。バカだ。


照れたときに下がる眉も、襟足に触れるやわらかい髪も、笑うとのぞく八重歯も。

全部、見ているだけでじゅうぶんだと思っていたのにな。


生まれてはじめての恋も、失恋も。ちょっと重たすぎて、そろそろ支えきれそうにないよ。

ねえ、本城くん。苦しいよ。それくらい、好きだったよ。

でもね、たぶん、これからも、好きだよ。


ごめんね。

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