わらって、すきっていって。


「おっす、あんこ」

「あ、ちーくん! おはようっ」


ぽすんと華奢な肩を叩くと、決まってうれしそうな笑顔を浮かべて振り返る。同時に、彼女の細くてやわらかい髪が風に舞って、いいにおいがした。


後夜祭のとき、このまま死んでしまうんじゃないかってほど号泣していたあんこは、最近になってまたよく笑うようになった。

たぶん本城とはまだなにも話していないんだろう。きっとあんこの傷口も完全にふさがったわけじゃない。

でも、その修復をするのは、やっぱりオレの仕事じゃないだろうから。


「あ。そのパーカー新しいやつ?」

「うお、すげー。よく分かったなあ」

「そりゃあね。ちーくんのことはわたしが誰よりもよく知ってるから!」


人の気も知らずに、よくもそんなことを言ってくれる。そんな能天気な顔しやがってさ。


――好きだよ。

あんこ、たぶんな。オレが世界でいちばん、おまえのこと好きだ。

重さも、長さも、誰にも負けねえと思うよ。たぶん、こればっかりは、本城にだって。


「ねえちーくん。今週末さ、一緒にゲームしようよ。ちーくんの家で」

「しょうがねえなー。ところで小町さん、受験勉強のほうは大丈夫なんですかねえ」

「……う、いいの、大丈夫……たぶん……」


でも、どうしたってやっぱり、オレはこのポジションから降りたくないんだ。

あんこって呼べる、ちーくんって呼んでもらえる、この、幼なじみっていう絶妙なポジションから。


「あはは! 声小さくなってんじゃん」

「もー! そう言うちーくんはどうなんですか!」


きみが、笑って好きって言う相手は、オレじゃなくていいから。

なあ、だから。


ずっと、きみは、笑っていて。


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