それからしばらくメイと会話を交わしてから、侍女が整えた寝台に入った。

「お休みなさいませ」

メイが灯りを落とし出て行くと、広い部屋の中は怖いほど静まり返った。
同じ建物の中にメイや数人の侍女が居るはずなのに、少しも気配を感じない。

長旅と緊張で疲れているはずなのに、頭が冴えてしまってなかなか寝付けなかった。

何度目かの寝返りで無理に眠る事を諦めて、リゼは身体を起こした。

そのままベッドから降り、月明かりの照らす窓辺に足を進める。

「……綺麗」

庭園の白い花々が月の光を受けて、ほのかに輝いている。

満月のせいか、夜の闇の恐怖を感じなかった。

時折吹く風に揺れる花々を見ていると、サランの里の事を思い出した。

夜中に家を抜け出して、カイと二人で花咲く河原を歩いた事が有った。

あれはまだ一年前の事なのに、遠い昔の事のように感じる。

懐かしく眺めていたリゼは身を翻して部屋の奥に行き、けれどすぐに戻って来て静かに両開きの窓を開けた。

どうせ眠れないんだし、庭を歩いてみたくなった。


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