入浴後、昨夜以上の念入りさで、身体中の手入れをされたリゼは、純白の夜着を身に付け王の来訪を待っていた。

どれくらいの時間が経ったのか感覚さえ無くなった頃、国王が後宮に向かったとの知らせが有った。

逃げ出したくなるような緊張感で息苦しさすら感じていると、予想より早く七ノ宮が騒がしくなった。

そしてその直後リゼの私室の扉が開き、エザリアの国王、クラウスが姿を現した。

「……!」

ソフィアとメイ、それから侍女達が深く頭を下げる中、リゼはあまりの驚きに身動きが出来ずにいた。

白い夜着に、長衣を羽織った王の顔は、昨夜庭で遭った不審な男の顔と同じものだった。

一歩一歩近寄って来る王の姿に、頭の中は混乱して、無礼をたしなめるソフィアの言葉も理解出来ない程だった。

(カイに似た怪しい男が王だったなんて……でもどうして……)

頭の中を、数々の疑問がかけ巡る。

そうしている間も王との距離は縮まっていた。

ついにリゼの目の前まで来た王は、足を止めリゼを見下ろして来た。

冷たく鋭い目に、身体が凍りつくようだった。

王はリゼの様子を見て目を細め、それからソフィアに向かい低く響く声で言った。

「全員下がらせろ」

「はい」

ソフィアはすぐにメイを含む皆を部屋から立ち退かせ、それから次の指示を待つように王を見た。

「お前もだ」

王は、どこまでも冷たく言う。

ソフィアは一瞬表情を変えながらも、すぐに部屋を出て行った。


二人きりになると、王はリゼに更に近寄り、素早い動きで手首を掴んだ。

「昨夜と違ってずいぶんと大人しいな。今日は剣を持っていないのか?」

口元だけの笑みを浮かべながら言われ、リゼは恐怖に目を瞠った。

この作品のキーワード
恋愛  ファンタジー  後宮  寵愛    幼馴染